数学者・計算機科学者であるDonald E. Knuth氏の開発した数式組版システムTeXから発展した,LaTeXについての入門的な説明です.
このページでは数式に関する事項を扱っています.

Webサイトで数式を表示するOSSのKaTeXMathJaxもほぼ同様の記法で数式を入力します.

次はLaTeXで出力したコーシーの積分公式の例です.

目次

    1. 基本
    2. イコールの位置を揃える
    3. 長い式の分割
    4. 連立方程式
  1. 数学記号
  2. 定理環境
  3. 関数の定義・再定義
    1. 関数定義
    2. 引数
    3. 再定義
    4. 暫定的に使った文字を書き換える
  4. 数式番号
    1. 参照した数式番号だけ表示
  5. 参考文献

基本

インラインで書くには$で囲んで数式を書き,ディスプレイスタイルにするには$$で囲んで数式を書きます.

$f(x) = x$を独立した行で表示するには、$$f(x) = x$$

もっともPDF出力する場合にはディスプレイスタイルはスタイルファイルを読み込ませて,より優れた表示スタイルへと拡張・利用するのが一般的です.
ですから,$$を使う機会はほとんどありません.

イコールの位置を揃える

数式執筆には様々な環境が用意されていますが,一例としてalign環境を挙げましょう.

\begin{align}
a &= b \\
&= c
\end{align}

align環境では\\ によって数式を改行でき,この例では2段の式となります.
&直後に記載された文字で上と下の段の位置が揃える環境です.
式を見栄え良く印字できます.

長い式の分割

長い式を見栄え良く分割するにはmultline環境を使います.

\begin{multline}
1段目 \\
2段目 \\
3段目
\end{multline}

連立方程式

連立方程式はcase環境を用いて書くことができますが,インラインスタイルで表示され,見た目が美しくありません.
ディスプレイスタイルで連立方程式を記述するには,プリアンブルでmathtools.styを適用した上で,式中に次のように書きます.

\begin{dcases}
場合分け1 & 条件1 \\
場合分け2 & 条件2
\end{dcases}

入力 出力
x^{2} 上付き添字
x_{2} 下付き添字
\frac{1}{2} 分数

数学記号

入力 出力
pm プラスマイナス
neq ノットイコール
\partial 偏微分記号

定理環境

定理・補題・系を作る例は次の通りです.
amsthmパッケージを読み込ませています.

\usepackage{amsthm}
\newtheorem{theorem}{定理}
\newtheorem{lemma}[theorem]{補題}
\newtheorem{corollary}[theorem]{系}

この例では,補題と系は定理の続き番号となります.
[theorem]を取り除くと番号付けが分離します.

関数の定義・再定義

関数定義

プリアンブルで\newcommandを使って,新しい定義を行うことができます.
例えば,微分のdをゴシックで表記したいなら,

\newcommand{\diff}{\mathop{} \mathrm{d}}

とすればdiff関数ができあがります.
(この例では,続けて書かれる変数の前に小さなスペースが入るsin・cosと同様のスペースを必要になったときに前に自動で入れるため\mathopを置いて,全微分の記号「d」が数式中でイタリックとならないように,\mathrmによってブロック体にしています.)

引数

newcommand関数は引数を取ることもできます.
オプションとして引数の数を指定し,#nの形で,n番目の引数が入る位置を与えます.

先ほどのdの記号を用いて,全微分を\tdfで作る例を考えましょう.
dy/dxを綺麗なディスプレイスタイルで書くために,分数を作るfrac関数に倣った書き方をして\tdf{y}{x}と書きたいとすれば,

\newcommand{\tdf}[2]{\frac{\diff #1}{\diff #2}}

とします.

再定義

既存の定義を修正する場合には,\newcommandではなく\renewcommandを使います.

安全でない書き方ですが,\defを使うこともできます.
\def\newcommand\renewcommandを区別せず定義・再定義します.

暫定的に使った文字を書き換える

\letは最初に記された関数を次に記された内容に置き換えます.\mofumofuをnekojarashiと表記したいのであれば,

\let{\mofumofu}{nekojarashi}

とします.
同じアルファベットを使う可能性のある概念的な言葉に,後から変数を当てたいときにも有用でしょう.

数式番号

参照した数式番号だけ表示

式に\labelをつけた場合,その数式番号を\eqrefで参照することができます.
全ての式ではなく,数式番号を利用した式にだけ数式番号を表示したい場合は,プリアンブルに次を書いてmathtools.styを読み込ませてください.

\usepackage{mathtools}
\mathtoolsset{showonlyrefs=true}

参考文献

LaTeXの諸設定を解説した,LaTeXで組版された本です.

  • 生田誠三 (2000)「LATEX2ε文典」朝倉書店