Leslie B. Lamportさんの開発した数式組版システムLaTeXについての入門的な説明です.
このページでは別のシステムで管理すべき参考文献と,独立して扱った方がよいであろう数式を除いた事項を扱っています.
すなわち,このページで焦点を当てるのは,主に書類の体裁に関わる事項です.

Webサイト構築でのHTMLとCSSの関係のように,LaTeXは本文で文章構造を定め,クラスファイルやスタイルファイルと呼ばれるものを適用して見た目を変えます.
このため,見た目を後回しにして,論理に集中して執筆を行うことができます.

目次

  1. インストール
  2. ファイルの作成
  3. フォーマット
    1. 二段組み
  4. 本文とプリアンブル
    1. 本文
    2. プリアンブル
  5. タイトルページ
    1. タイトル
    2. 所属機関
    3. 概要
    4. 目次
  6. 見出し
    1. 節番号の参照
  7. 改行
  8. 箇条書き
    1. 順序なしリスト
    2. 順序付きリスト
    3. 定義リスト
  9. 文字のサイズ
  10. 注釈
    1. 脚注
    2. 傍注
    3. 後注
  11. 体裁変更
    1. ヘッダー・フッター
    2. 余白
    3. 箇条書きのカスタマイズ
  12. 長編
    1. 改ページ
    2. 前書き・後書き
    3. ファイル分割
    4. 謝辞
  13. 参考文献

インストール

Macの場合の説明です.
MacTeXのパッケージをダウンロードして,インストールします.
すると,執筆用に用意されているアプリケーションとしてTeXShop,参考文献管理用にBibDeskがインストールされます.
それぞれLaTeXBibTeXというシステムを利用するためのアプリケーションです.

ファイルの作成

TeXShopで拡張子texのテキストファイルを作成します.
例えば,example.texというファイル名です.
同様に,BibDeskでexample.bibのテキストファイルを作成して使います.

これらのファイルをコンパイルして,PDFを生成するという流れです.

フォーマット

texファイル本文の冒頭では,documentclass関数でどのような雛形(クラスファイル:拡張子cls)を使うか宣言します.
例えば,英語論文を書くために用意されているarticle.clsを使うことにするなら,

\documentclass{article}

とします.

二段組み

\documentclassのオプションとして[twocolumn]を設定することで二段組みとなります.

\documentclass[twocolumn]{article}

本文とプリアンブル

本文

本文は,document環境で入力します.
LaTeXにおける「環境」とは,\begin{環境名}〜\end{環境名}の形をとる構文です.

\documentclass{article}
\begin{document}

%ここに本文を書きます。
本文テスト

\end{document}

ここで,%記号はコメントアウトです.
ブロックコメントはcomment環境により実現できます.

以上をコンパイルすることで,PDFが生成されます.

TeXShopでのコンパイルは適当な設定を行なってボタンかショートカットを押すだけですが,設定については優れたサイトがたくさんあることと,アプリケーションやOSのアップデートをこのサイトではフォローしていないという理由により割愛します.

プリアンブル

document環境の前はプリアンブルと呼ばれる部分です.

\documentclass{article}

%ここがプリアンブルです。

\begin{document}

%ここに本文を書きます。
本文テスト

\end{document}

プリアンブルではクラスファイルを読み込んだ後に設定を事後的に修正したり,\usepackage関数を用いてスタイルファイル(拡張子sty)で定義されているパッケージを読み込むことができます.
スタイルファイルには統計,ベクトル,可換図式など様々なものが用意されていますので,分野に応じて使用してください.

例えば,数学記号や数式の記述方法を拡張するために,アメリカ数学会(AMS)の名を冠した2つのパッケージ(amsmathamssymb)を読み込むとすれば,プリアンブルに

\usepackage{amsmath, amssymb}

と書きます.

タイトルページ

タイトル

タイトル,著者名,日付を表示するには本文冒頭(\begin{document}の真下)に次を入力します.

\title{タイトル}
\author{著者名}
\date{日付}
\maketitle

date関数を省略すると,デフォルト値としてコンパイル時の日付が設定されます.

所属機関

著者名とともに所属機関を表示するには,authblk.styを使います.

\usepackage[auth-sc]{authblk}

[]で囲まれるところはオプションです.
auth-scは著者名を先頭以外も大文字にするサンセリフ体のオプションであることを意味しています.

authblk.styには,他にも次のようなオプションが用意されています.

  • auth-lg:文字サイズを大きくする.
  • affil-it:所属をイタリックにする.

著者名と所属名は,\maketitleの前に次の要領で結びつけて書くことができます.

\author[*]{氏名1}
\author[**]{氏名2}
\author[**]{氏名3}
\affil[*]{所属1}
\affil[**]{所属2}

概要

概要は本文中にabstract環境を作って書きます.

\begin{abstract}
ここに概要を書きます。
\end{abstract}

目次

目次を入れるには,本文中で目次を入れたい位置に

\tableofcontents

と書きます.

見出し

本文の見出しには以下のような階層が設けられています.

\part{部}
\chapter{章}
\section{節}
\subsection{項}
\subsubsection{目}
\paragraph{パラグラフ}
\subparagraph{サブパラグラフ}

ただし,見出しレベルごとにどのようなデザインになるかはクラスファイルに依存します.
article.clsの場合だと章以上の階層は使えないといった制限があったり,冊子用のbook.clsでは右ページと左ページでレイアウトが異なる,レポート用のreport.clsでは左右均等なレイアウトとなるといった違いがあります.

一般には,partは改丁,chapterは改ページ,sectionは見出しを大きくするという処理が施されます.
連番が自動で振られるクラスファイルもありますが,\section*{節}のようにすることで,その節だけ連番を付さないことができます.

節番号の参照

参照を行うには,はじめに参照したい値を持つものに対し,\label関数で適当な名前のラベルを付けて保持します.

\section{あるネコについて} \label{OnTheCat}

それを\ref関数で呼ぶことで,ラベルを付けた値が入ります.

ストーブの前で香箱座りしていたネコについて述べた\ref{OnTheCat}節では、

しばしばノンブルや章番号がアラビア数字でなくローマ数字であるような場合もあると思いますが,label関数は正しく値を保持します.

改行

LaTeXで本文を改行するには,改行する文末に\\または\parをおきます.

ここで\\
改行

数式の環境は後述しますが,環境によっては式中の改行を認めません.

箇条書き

順序なしリスト

順序なしリストを作成するには,itemize環境を使います.
項目は\itemで区切ります.

\begin{itemize}
\item 項目1
\item 項目2
\end{itemize}

順序付きリスト

順序付きリストはenumerate環境で作成します.

\begin{enumerate}
\item 項目1
\item 項目2
\end{enumerate}

定義リスト

定義リストにはdescription環境を使います.

\begin{description}
\item[項目1] 説明1
\item[項目2] 説明2
\end{description}

文字のサイズ

文字サイズの変更命令は次のように使います.

{\large 拡大したいテキスト}

種類は以下の通りです.

  • \tiny
  • \scriptsize
  • \footnotesize
  • \small
  • \normalsize:標準サイズ
  • \large
  • \Large
  • \LARGE
  • \huge
  • \Huge

注釈

脚注

脚注は\footnoteにより設置します.

この文章\footnote{脚注の文}に脚注を加える。

傍注

傍注は\marginparにより設置します.

この文章\footnote{傍注の文}に脚注を加える。

後注

後注には,endnotes.styを使用します.
\footnote{脚注の文}と同様に\endnote{後注の文}とするだけです.

脚注をまるごと後注にしたいなら,関数を振り替えるletを使って,

\let\footnote=\endnote

とプリアンブルに書くと簡単です.

体裁変更

ヘッダー・フッター

ヘッダー・フッターを設定するには,fancyhdr.styを使います.

\usepackage{fancyhdr}

続けて,プリアンブルでヘッダーやフッターを設定します.

\pagestyle{fancy}
\lhead{左上ヘッダー}
\chead{中央ヘッダー}
\rhead{右上ヘッダー}
\lfoot{左下フッター}
\cfoot{中央フッター}
\rfoot{右下フッター}

節の始まりなどは通常異なるレイアウトが指定されていますから,別途該当箇所に\thispagestyle{fancy}を置いて,このスタイルファイルが作用するようにする必要があります.

余白

各種余白の設定にはgeometry.styを使います.

オプションが非常に多く,上下左右のマージンのほか,ヘッダー・傍注・本文幅等を含め様々な余白調整が可能です.
以下は上下左右マージンの例です.

\usepackage[top=3cm, bottom=3cm, left=2cm, right=2cm]{geometry}

箇条書きのカスタマイズ

箇条書きのラベルを変更するには,renewcommandを使って,以下のようにパラメータを変更します.

  • itemize環境の深さレベル1の記号なら\labelitemi
  • enumerate環境の深さレベル2の記号なら\labelenumii
  • description環境の見出しの付け方なら\descriptionlabel

より細かい仕様を変えるにはenumitem.styを使います.
箇条書きを水平配置することなども可能です.

長編

改ページ

\clearpage\newpageという2つの命令があります.
一段組みなら挙動は同じですが,\clearpageはページを改め,\newpageは段を改めるという違いがあります.

前書き・後書き

前書き・後書きでノンブルの付け方を変えるには,frontmatter\mainmatter\backmatterを使って仕切りを入れます.

\begin{document}
\frontmatter
%前書き
\mainmatter
%本文
\backmatter
%後書き
\end{document}

ファイル分割

分割したtexファイルは,\input{ファイル名}\include{ファイル名}で読み込むことができます.
includeコマンドだと,コマンド前後に改ページが入るという違いがあります.

謝辞

author関数で入力する著者名にfootnote関数による脚注の要領で\thanks{謝辞}と付ければ,謝辞が脚注に表示されます.

独立したセクションとして謝辞を設けたいなら,節番号を付けないために\section等にアスタリスクを付けることができます.

\section*{謝辞}

参考文献

LaTeXの諸設定を解説した,LaTeXで組版された本です.

  • 生田誠三 (2000)「LATEX2ε文典」朝倉書店