誇大広告に関する法令の整理です.

目次

  1. 法令
  2. 景表法
  3. 医薬品・化粧品

法令

2021/3/2時点の整理です.

景表法

景表法1条は次の目的を掲げています.

この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。

すなわち,景表法は

不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止する

ことで,一般消費者の利益を保護することを目指しています.

さて,「景品類」とは

顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するもの

とされ,

  • 顧客を誘引するための手段であること
  • 自己の供給に付随して提供すること
  • 経済上の利益であること

を満たし,内閣総理大臣が指定するものだとしています(2条3項).
4条では,

内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。

としています.
景品類の種類や方法は予め企画が練られているでしょうから,校正の立場からは,広告制作段階まで流動的な可能性のある最高額・総額に特に注意が必要です.

一般懸賞の限度額は次の通りです.

懸賞による 取引価額 最高額 総額
5,000円未満 取引価額の20倍 懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上 10万円 懸賞に係る売上予定総額の2%

地域や業界の事業者が共同して提供する共同懸賞の限度額は次の通りです.

最高額 総額
取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%

全員提供や先着順の総付懸賞の限度額は次の通りです.

取引価額 景品類の最高額
1,000円未満 200円
1,000円以上 取引価額の10分の2

他方,「表示」とは

顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するもの

であり(2条4項),5条で不当な表示が禁止されています.
不当な表示の類型は3つあります.

1号の「優良誤認表示」.
消費者庁は合理的な根拠を求めることができます.
提出できない性能表示は優良誤認表示の不実証広告として規制されます.
5条1号の条文は次の通りです.

商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

2号は「有利誤認表示」です.
比較対照価格を記した二重価格表示につき,比較対照価格の内容について適正な表示が行われていない場合などが当たります.

商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

3号の「その他誤認されるおそれがある表示」は告示が定められています.
無果汁の清涼飲料水等,原産国,消費者信用の融資費用,有料老人ホームに関する不当表示や,おとり広告です.

医薬品・化粧品

薬機法10章は広告について述べており,商業校正との関わりがあります.

66条1項は次の通り,虚偽又は誇大な記事の広告を禁止しています.

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2項でもまた,

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

として,ミスリーディングも禁止されるということにつき,念を押しています.
そして,3項では性道徳に反する広告を禁止しています(避妊具等で注意が必要かもしれません).

ちなみに,医療法1章2節でもまた,医業等の広告でも誇大広告や公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしてはならないことが述べられています.

薬機法に戻ると,特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品では広告が制限されうることが定められています(67条).
また,承認前の医薬品等について広告が禁止されますが,化粧品は除外されています(68条).

医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日薬生発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)では,化粧品を含む医薬品等の広告が虚偽・誇大とならないように適正化を図っています.
具体的には,最大級表現の禁止や,医薬関係者等の推せんを広告することの禁止,懸賞・賞品による広告の制限,不安等をあおる広告の制限が記されています.

パッケージについては医薬品に対して定めがあります.
医薬品では原則として警告や操作方法,包装単位などを記載した添付文書を必要とし,直接の容器等にも記載事項の定めがあります(50-54条).