このページでは,文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」から,商業校正でしばしば赤字が入るように感じるものを抜粋しています.

目次

  1. 文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」からの抜粋
    1. あたたかい(温・暖)
    2. かた(形・型)
    3. かたい(堅・固・硬)
    4. こす(越・超)
    5. のぞむ(望・臨)
    6. まじる(交・混)
    7. まち(町・街)
  2. 文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」の収録項目一覧

文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」からの抜粋

あたたかい(温・暖)

家電や服飾関係のカタログ・パンフレット等で注意します.
エアコンは「暖かい」となるでしょうが,服飾関係では商品の特徴を理解する必要があり,素材が発熱するものや空気の層を作るものによって使い分けます.

  • 温かい:冷たくない.(スープを温める/心温まる)
  • 暖かい:寒くない.(暖かな毛布/室内を暖める)

かた(形・型)

工業製品カタログ等で注意します.
工業製品カタログではメーカーの方が文章を作成していることが多く,成形/成型のように紛らわしい語があるので,読める文章なら素読みの際に意味を追ったり,クロスチェックをかけておくとよいでしょう.

  • 形:目に見える形状.フォーム.(ピラミッド形,柔道の形)
  • 型:決まった形式.タイプ.(鋳型,大型台風)

かたい(堅・固・硬)

様々な商品で出てくる表現ですが,稀に周辺の文章を素読みしてもどの「かたい」か分からないことがあります.
使い分けは次の通りです.

  • 堅い:中身が詰まっていて強い.確かである.(堅い材木/堅い守り/合格は堅い/口が堅い/堅苦しい)
  • 固い:結び付きが強い.揺るがない.(固い友情/頭が固い)
  • 硬い:軟らかくない.外力に強い.こわばっている.(硬い殻/硬い表現)

こす(越・超)

コンピュータ等のチラシ・カタログのほか,資本金がある額を「超し」たり,ハードルを「越え」て何かに取り組めるようになったことを記述する企業年史でも見かけます.

  • 越す:ある場所・地点・時を過ぎて,その先に進む.(選手としてのピークを越える)
  • 超す:ある基準・範囲・程度を上回る.(想定を超える大きな災害/10万円を超える額)

のぞむ(望・臨)

旅行パンフレット等で注意します.
出てくるのはホテルの客室や名所の説明文です.

  • 望む:遠くを眺める.(山頂から富士を望む)
  • 臨む:面する.(海に臨む部屋)

まじる(交・混)

製品カタログ等で注意します.

  • 交じる:元の素材が判別できる(芝生に雑草が交ざる/小雨交じり)
  • 混じる:元の素材が判別できない(セメントに砂を混ぜる/コーヒーにミルクを混ぜる/雑音が混じる)

まち(町・街)

自治体のパンフレットや大型商業施設の中に入った店舗の広告等で注意します.
表現しているものが場所だったり,にぎわいだったりするからです.

  • 町:行政区画,人家のある地域(町役場/町外れ)
  • 街:商店が並んだにぎやかな通りや地域(街明かり/街角)

文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」の収録項目一覧

連番 異字同訓の漢字
001 あう(会・合・遭)
002 あからむ(赤・明)
003 あがる・あげる(上・揚・挙)
004 あく・あける(明・空・開)
005 あし(足・脚)
006 あたい(値・価)
007 あたたかい・あたたかだ・あたたまる・あたためる(温・暖)
008 あつい(熱・暑)
009 あてる(当・充・宛)
010 あと(後・跡・痕)
011 あぶら(油・脂)
012 あやしい(怪・妖)
013 あやまる(誤・謝)
014 あらい(荒・粗)
015 あらわす・あらわれる(表・現・著)
016 ある(有・在)
017 あわせる(合・併)
018 いく・ゆく(行・逝)
019 いたむ・いためる(痛・傷・悼)
020 いる(入・要)
021 うける(受・請)
022 うた(歌・唄)
023 うたう(歌・謡)
024 うつ(打・討・撃)
025 うつす・うつる(写・映)
026 うまれる・うむ(生・産)
027 うれい・うれえる(憂・愁)
028 おかす(犯・侵・冒)
029 おくる(送・贈)
030 おくれる(遅・後)
031 おこす・おこる(起・興)
032 おさえる(押・抑)
033 おさまる・おさめる(収・納・治・修)
034 おす(押・推)
035 おそれ・おそれる(恐・畏・虞)
036 おどる(踊・躍)
037 おもて(表・面)
038 おりる・おろす(降・下・卸)
039 かえす・かえる(返・帰)
040 かえりみる(顧・省)
041 かえる・かわる(変・換・替・代)
042 かおり・かおる(香・薫)
043 かかる・かける(掛・懸・架・係・賭)
044 かく(書・描)
045 かげ(陰・影)
046 かた(形・型)
047 かたい(堅・固・硬)
048 かま(釜・窯)
049 かわ(皮・革)
050 かわく(乾・渇)
051 きく(聞・聴)
052 きく(利・効)
053 きる(切・斬)
054 きわまる・きわめる(窮・極・究)
055 こう(請・乞)
056 こえる・こす(越・超)
057 こたえる(答・応)
058 こむ(混・込)
059 さがす(探・捜)
060 さく(裂・割)
061 さげる(下・提)
062 さす(差・指・刺・挿)
063 さます・さめる(覚・冷)
064 さわる(触・障)
065 しずまる・しずめる(静・鎮・沈)
066 しぼる(絞・搾)
067 しまる・しめる(締・絞・閉)
068 すすめる(進・勧・薦)
069 する(刷・擦)
070 すわる(座・据)
071 せめる(攻・責)
072 そう(沿・添)
073 そなえる(備・供)
074 たえる(耐・堪)
075 たずねる(尋・訪)
076 たたかう(戦・闘)
077 たつ(断・絶・裁)
078 たつ・たてる(立・建)
079 たっとい・たっとぶ・とうとい・とうとぶ(尊・貴)
080 たま(玉・球・弾)
081 つかう(使・遣)
082 つく・つける(付・着・就)
083 つぐ(次・継・接)
084 つくる(作・造・創)
085 つつしむ(慎・謹)
086 つとまる・つとめる(勤・務・努)
087 とかす・とく・とける(解・溶)
088 ととのう・ととのえる(整・調)
089 とぶ(飛・跳)
090 とまる・とめる(止・留・泊)
091 とらえる(捕・捉)
092 とる(取・採・執・捕・撮)
093 ない(無・亡)
094 なおす・なおる(直・治)
095 なか(中・仲)
096 ながい(長・永)
097 ならう(習・倣)
098 におい・におう(匂・臭)
099 のせる・のる(乗・載)
100 のぞむ(望・臨)
101 のばす・のびる・のべる(伸・延)
102 のぼる(上・登・昇)
103 はえ・はえる(映・栄)
104 はかる(図・計・測・量・謀・諮)
105 はじまる・はじめ・はじめて・はじめる(初・始)
106 はな(花・華)
107 はなす・はなれる(離・放)
108 はやい・はやまる・はやめる(早・速)
109 はる(張・貼)
110 ひく(引・弾)
111 ふえる・ふやす(増・殖)
112 ふく(吹・噴)
113 ふける(更・老)
114 ふね(船・舟)
115 ふるう(振・震・奮)
116 ほか(外・他)
117 まざる・まじる・まぜる(交・混)
118 まち(町・街)
119 まるい(丸・円)
120 まわり(回・周)
121 みる(見・診)
122 もと(下・元・本・基)
123 や(屋・家)
124 やさしい(優・易)
125 やぶれる(破・敗)
126 やわらかい・やわらかだ(柔・軟)
127 よ(世・代)
128 よい(良・善)
129 よむ(読・詠)
130 わかれる(分・別)
131 わく(沸・湧)
132 わざ(技・業)
133 わずらう(煩・患)