商業校正向けの異字同訓
このページでは,文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」から,商業校正でしばしば赤字が入るように感じるものを抜粋しています.
目次
文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」からの抜粋
あたたかい(温・暖)
家電や服飾関係のカタログ・パンフレット等で注意します.
エアコンは「暖かい」となるでしょうが,服飾関係では商品の特徴を理解する必要があり,素材が発熱するものや空気の層を作るものによって使い分けます.
- 温かい:冷たくない.(スープを温める/心温まる)
- 暖かい:寒くない.(暖かな毛布/室内を暖める)
かた(形・型)
工業製品カタログ等で注意します.
工業製品カタログではメーカーの方が文章を作成していることが多く,成形/成型のように紛らわしい語があるので,読める文章なら素読みの際に意味を追ったり,クロスチェックをかけておくとよいでしょう.
- 形:目に見える形状.フォーム.(ピラミッド形,柔道の形)
- 型:決まった形式.タイプ.(鋳型,大型台風)
かたい(堅・固・硬)
様々な商品で出てくる表現ですが,稀に周辺の文章を素読みしてもどの「かたい」か分からないことがあります.
使い分けは次の通りです.
- 堅い:中身が詰まっていて強い.確かである.(堅い材木/堅い守り/合格は堅い/口が堅い/堅苦しい)
- 固い:結び付きが強い.揺るがない.(固い友情/頭が固い)
- 硬い:軟らかくない.外力に強い.こわばっている.(硬い殻/硬い表現)
こす(越・超)
コンピュータ等のチラシ・カタログのほか,資本金がある額を「超し」たり,ハードルを「越え」て何かに取り組めるようになったことを記述する企業年史でも見かけます.
- 越す:ある場所・地点・時を過ぎて,その先に進む.(選手としてのピークを越える)
- 超す:ある基準・範囲・程度を上回る.(想定を超える大きな災害/10万円を超える額)
のぞむ(望・臨)
旅行パンフレット等で注意します.
出てくるのはホテルの客室や名所の説明文です.
- 望む:遠くを眺める.(山頂から富士を望む)
- 臨む:面する.(海に臨む部屋)
まじる(交・混)
製品カタログ等で注意します.
- 交じる:元の素材が判別できる(芝生に雑草が交ざる/小雨交じり)
- 混じる:元の素材が判別できない(セメントに砂を混ぜる/コーヒーにミルクを混ぜる/雑音が混じる)
まち(町・街)
自治体のパンフレットや大型商業施設の中に入った店舗の広告等で注意します.
表現しているものが場所だったり,にぎわいだったりするからです.
- 町:行政区画,人家のある地域(町役場/町外れ)
- 街:商店が並んだにぎやかな通りや地域(街明かり/街角)
文化審議会国語分科会 (2014)「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」の収録項目一覧
連番 | 異字同訓の漢字 |
---|---|
001 | あう(会・合・遭) |
002 | あからむ(赤・明) |
003 | あがる・あげる(上・揚・挙) |
004 | あく・あける(明・空・開) |
005 | あし(足・脚) |
006 | あたい(値・価) |
007 | あたたかい・あたたかだ・あたたまる・あたためる(温・暖) |
008 | あつい(熱・暑) |
009 | あてる(当・充・宛) |
010 | あと(後・跡・痕) |
011 | あぶら(油・脂) |
012 | あやしい(怪・妖) |
013 | あやまる(誤・謝) |
014 | あらい(荒・粗) |
015 | あらわす・あらわれる(表・現・著) |
016 | ある(有・在) |
017 | あわせる(合・併) |
018 | いく・ゆく(行・逝) |
019 | いたむ・いためる(痛・傷・悼) |
020 | いる(入・要) |
021 | うける(受・請) |
022 | うた(歌・唄) |
023 | うたう(歌・謡) |
024 | うつ(打・討・撃) |
025 | うつす・うつる(写・映) |
026 | うまれる・うむ(生・産) |
027 | うれい・うれえる(憂・愁) |
028 | おかす(犯・侵・冒) |
029 | おくる(送・贈) |
030 | おくれる(遅・後) |
031 | おこす・おこる(起・興) |
032 | おさえる(押・抑) |
033 | おさまる・おさめる(収・納・治・修) |
034 | おす(押・推) |
035 | おそれ・おそれる(恐・畏・虞) |
036 | おどる(踊・躍) |
037 | おもて(表・面) |
038 | おりる・おろす(降・下・卸) |
039 | かえす・かえる(返・帰) |
040 | かえりみる(顧・省) |
041 | かえる・かわる(変・換・替・代) |
042 | かおり・かおる(香・薫) |
043 | かかる・かける(掛・懸・架・係・賭) |
044 | かく(書・描) |
045 | かげ(陰・影) |
046 | かた(形・型) |
047 | かたい(堅・固・硬) |
048 | かま(釜・窯) |
049 | かわ(皮・革) |
050 | かわく(乾・渇) |
051 | きく(聞・聴) |
052 | きく(利・効) |
053 | きる(切・斬) |
054 | きわまる・きわめる(窮・極・究) |
055 | こう(請・乞) |
056 | こえる・こす(越・超) |
057 | こたえる(答・応) |
058 | こむ(混・込) |
059 | さがす(探・捜) |
060 | さく(裂・割) |
061 | さげる(下・提) |
062 | さす(差・指・刺・挿) |
063 | さます・さめる(覚・冷) |
064 | さわる(触・障) |
065 | しずまる・しずめる(静・鎮・沈) |
066 | しぼる(絞・搾) |
067 | しまる・しめる(締・絞・閉) |
068 | すすめる(進・勧・薦) |
069 | する(刷・擦) |
070 | すわる(座・据) |
071 | せめる(攻・責) |
072 | そう(沿・添) |
073 | そなえる(備・供) |
074 | たえる(耐・堪) |
075 | たずねる(尋・訪) |
076 | たたかう(戦・闘) |
077 | たつ(断・絶・裁) |
078 | たつ・たてる(立・建) |
079 | たっとい・たっとぶ・とうとい・とうとぶ(尊・貴) |
080 | たま(玉・球・弾) |
081 | つかう(使・遣) |
082 | つく・つける(付・着・就) |
083 | つぐ(次・継・接) |
084 | つくる(作・造・創) |
085 | つつしむ(慎・謹) |
086 | つとまる・つとめる(勤・務・努) |
087 | とかす・とく・とける(解・溶) |
088 | ととのう・ととのえる(整・調) |
089 | とぶ(飛・跳) |
090 | とまる・とめる(止・留・泊) |
091 | とらえる(捕・捉) |
092 | とる(取・採・執・捕・撮) |
093 | ない(無・亡) |
094 | なおす・なおる(直・治) |
095 | なか(中・仲) |
096 | ながい(長・永) |
097 | ならう(習・倣) |
098 | におい・におう(匂・臭) |
099 | のせる・のる(乗・載) |
100 | のぞむ(望・臨) |
101 | のばす・のびる・のべる(伸・延) |
102 | のぼる(上・登・昇) |
103 | はえ・はえる(映・栄) |
104 | はかる(図・計・測・量・謀・諮) |
105 | はじまる・はじめ・はじめて・はじめる(初・始) |
106 | はな(花・華) |
107 | はなす・はなれる(離・放) |
108 | はやい・はやまる・はやめる(早・速) |
109 | はる(張・貼) |
110 | ひく(引・弾) |
111 | ふえる・ふやす(増・殖) |
112 | ふく(吹・噴) |
113 | ふける(更・老) |
114 | ふね(船・舟) |
115 | ふるう(振・震・奮) |
116 | ほか(外・他) |
117 | まざる・まじる・まぜる(交・混) |
118 | まち(町・街) |
119 | まるい(丸・円) |
120 | まわり(回・周) |
121 | みる(見・診) |
122 | もと(下・元・本・基) |
123 | や(屋・家) |
124 | やさしい(優・易) |
125 | やぶれる(破・敗) |
126 | やわらかい・やわらかだ(柔・軟) |
127 | よ(世・代) |
128 | よい(良・善) |
129 | よむ(読・詠) |
130 | わかれる(分・別) |
131 | わく(沸・湧) |
132 | わざ(技・業) |
133 | わずらう(煩・患) |