このページでは,アニューアルレポート等に記載される企業財務の一般的性質について整理しています.
環境や事業の在り方が変容したために改善/悪化したという主張を検討するための事項です.

目次

  1. ROA
  2. ROE
  3. 財務レバレッジ
  4. 持続可能な成長
  5. 参考文献

ROA

ROA(=Return On Asset,総資産利益率)は

です.
手元に用意したお金からどれだけの利益を生み出せたかを表します.

ROE

ROE(=Return On Equity,自己資本利益率)は

です.
式変形すると,

となりますが,これはROEはROA(手元に用意したお金からどれだけの利益を生み出せたか)にという倍率を乗せたものであると言えます.
この倍率は,自分で用意した元手の何倍,(借り入れも含めて)お金を引っ張ってきたかという倍率で,財務レバレッジと呼ばれます.

さらに,ROAを式変形すると,

となります.

つまり,ROEを高めるには,売上高利益率・総資産回転率・財務レバレッジを高めることになります.

財務レバレッジ

を借入金,を自己資本,を利子率,を税率とします.
EBIT(=Earnings Before Interest and Taxes,利払前税引前利益)によって当期純利益を書き直すと

ですから,ROEは

となります.
ここで,ROIC(=Return On Invested Capital)とは投下資本利益率のことです.

式より,で,影響がポジティブかネガティブかが分かれます.
すなわち,投下資本利益率と,借入により支払う利息の高さや税率の低さを天秤にかけて,を上げるべきか下げるべきか判断します.

支払利息の利子率が大きいときに借入金の割合を小さくするのは自然です.
また,借入金は節税効果がありますから,税率が高いと借入のインセンティブが高くなります.

持続可能な成長

売上高を増加させるには新しい資産が必要になります.
資金調達が必要です.
もし新株を発行しないのであれば,株主資本の成長率が企業にとっての持続可能な成長率となります.

したがって,持続可能な成長率

と表現できます.(※ROAを使った部分は投下資本利益率によって計測すべきでしょうが,そこまでの厳密さは求めないものとします.)
ただし,は留保利益率,は期初株主資本による財務レバレッジです.

持続可能な成長率からのズレがあるなら経営改善(ROAの変更)か財務的な対処(の変更)が必要です.

持続可能な成長率より早く成長するとリソースが不足していきますし,遅く成長することは折角のリソースを休眠させてしまいます.
通常,高成長企業は資金不足に陥りやすく,成熟した企業は資金余剰となり成長機会を探すことになります.

参考文献

  • ロバート・C・ヒギンス (2015)「ファイナンシャル・マネジメント」第3版,ダイヤモンド社.(Robert C. Higgins (2011) “Analysis for Financial Management”, 10th ed., McGraw-Hill Education.)